我が家の子どもたちは、朝はご飯より、パン派。
なので、週の半分以上は朝ごはんはパンを主食として出しています。
が、共働きな我が家は、平日は買い物に行くことができないので、休日にまとめ買い、または多めに焼いておいて、冷凍。
それを毎朝リベイクして出すのが日課です。

でも、1週間以上経ったパンが冷凍庫の奥から出てくることもあり、
「未開封の袋のまま入れていたのに、袋の内側にびっしり霜がついている…!」
「リベイクしてみたけれど、なんだかパサパサして、独特のツンとした“冷凍庫臭”がして美味しくない…」
なんてショックを受けたり、子どもに「なんか今日おいしくない…」とNGを食らったことがあります。。。

袋を破いていないのに、一体どこからこの氷(霜)が湧いてきたのか。
そして、あの嫌な「冷凍庫臭」は一体どこからやってくるのか。

今回は、家庭用冷凍庫の中で繰り広げられている「水の物理現象(昇華)」と「脂質酸化・気体透過の化学」から、その謎について調べてみました。

1. 未開封なのに霜がつくのはなぜ?原因は「温度変化による水分の脱出(昇華現象)」

密閉された未開封のパンの場合、袋の外から水が入る隙間はないはずなのに、袋の内側にびっしりと雪のような霜がつく現象。
この氷の正体は、外から入った水分ではなく、「パンそのものの中から抜け出した水分」です。

鍵を握るのは「昇華(しょうか)」

水は通常、「氷(固体)→ 水(液体)→ 水蒸気(気体)」と状態変化しますが、氷点下の環境でも、氷から液面を経ずに直接気体(水蒸気)へと蒸発する「昇華」が常に起きています。

  1. 温度のゆらぎ
    冷凍庫のドアを開け閉めすると、庫内の温度が一瞬上がります。
  2. 水分の蒸発(昇華)
    温度が上がると、パンの表面にある微小な氷の結晶が気体(水蒸気)となって袋の空間へ逃げ出します。
  3. 急冷と再結晶化
    ドアが閉まり再び庫内が急冷されると、逃げ場を失って袋の中に充満していた水蒸気が、冷たい袋の内側にぶつかって一気に凍りつきます。

食事の支度等で開け閉めするたびにこれを繰り返すことで、「パンの水分がどんどん吸い出され、袋の内側に霜として溜まっていく」のです。

2. パンの「冷凍庫臭」と「冷凍焼け」の原因とは?味や風味を落とす2つの現象

水分が抜けてカピカピになった食品を「冷凍焼け(フリーズバーン)」と呼ばれます。
特にパンを冷凍したときに気になる「あの嫌な油っぽい冷凍庫臭」には、2つの現象が影響しています。

① 食品自身の脂質酸化(自発的な酸化臭)

お肉だけでなく、食パンにも約3〜5%程度の脂質(バター、ショートニング、小麦由来の脂質等)が含まれています。

水分が昇華してスポンジ状の空洞ができると、そこに酸素が侵入し、脂質が酸化されて「ヘキサナール」等の揮発性アルデヒド類が発生します。
これが「古くなった油のようなツンとした臭い」の正体です。

② 庫内の揮発性成分の吸着(外からの臭い移り)

冷凍庫の中には、過去に保存した魚、肉、タレ、香味野菜などから揮発した目に見えない微量な臭い成分が漂っています。
水分が抜けてスカスカになったパンの気泡構造(クラム)は、まるで活性炭のように庫内の雑多な臭い分子を強力に吸着(物理吸着)してしまいます。
(※未開封のパンなら、周囲の揮発成分を吸収しないのでは?という疑問に対しては、次の段落で回答します)

つまり、「パン自身の油が酸化した臭い」+「庫内の雑多な臭いをパンが吸い取った臭い」が混ざり合ったものが、あの独特の嫌な冷凍庫臭となっていたのです。

冷凍焼けしたパンは食べても大丈夫?

ちなみに、冷凍焼けしたパンは、水分が抜けて油が酸化しているだけなので、食中毒菌が繁殖したわけではなく、食べてもお腹を壊すリスクは基本的にありません
ただし、タンパク質が変性して水分を抱え込めなくなっているため、普通にトーストすると「パサパサ・ボソボソ」とした食感になってしまいます。
もし冷凍焼けしてしまったら、霧吹きで表面にしっかり水を吹きかけてからトーストするか、フレンチトーストやパングラタンのように卵液やスープをじっくり吸わせる料理にリメイクするのがおすすめです。
(パンの耳まで、たっぷりチーズをかけて焼いても、味も濃いですし、チーズに冷凍焼け部分が隠れていれば気にならないかと思います。我が家では、冷凍焼けが強く出てしまったパンは、チーズとはちみつをたっぷり塗って、ご褒美ご飯として食べています笑。)

3. なぜ普通のラップやジッパー袋では防げないのか?プラスチックの盲点「気体透過性」

ジッパーに入れていたり、未開封のパンであれば、純粋に油が酸化した臭いだけ?
冷凍臭は、ジッパーにさえ入れてしまえば、かなり防げる?
とも思ったのですが、実はジッパー等の中に梱包された状態でも、やはり揮発性の成分を吸ってしまうケースが多いようです。。。

包装材料工学では有名な話のようなのですが、「プラスチックの気体透過性(ガスバリア性の限界)」により、ジッパー等の身近にある包装材では、揮発性成分が入ってしまうとのこと。

  • 一般的なジッパー袋(ポリエチレン / PE)
    ポリエチレンの分子と分子の隙間は、酸素分子や臭いの分子(有機溶媒・芳香族化合物)よりも大きいため、酸素や臭気成分が袋の壁をスルスルと通り抜けて(透過して)しまいます
  • 一般的な薄手ラップ
    いくら密着させても、端のわずかな隙間や折り目から気体が侵入・漏出します。

密閉したつもりでも、プラスチックのフィルムをすり抜けて酸素が入り、庫内の臭いが侵入してくるため、長期保存するとどうしても劣化してしまいます。

4. 市販の「パン専用冷凍保存袋」はなぜ優れているのか?アルミ3層構造の科学的メリット

キッチン用品売り場で見かける「パン冷凍保存袋」などの専用パッケージ。
「普通のジッパー袋と何が違うの?」と思ったのですが、素材表示を見ると「ポリエチレン + アルミニウム箔 + PET」の3層構造(アルミラミネートフィルム)になっており、冷凍臭を防ぐ等のメリットが謳われていました。

この「アルミニウム層」があることで、プラスチック単体では不可能な3つの科学的メリットは、

  1. 酸素・臭い・水蒸気の透過率が「実質ゼロ」(完全なガスバリア)
    金属の結晶格子は分子同士が極めて緻密に結合しているため、気体分子が通り抜けられません。庫内の悪臭を100%遮断し、パン内部の油脂酸化と水分の昇華を強力に食い止めます。
  2. 遮光性による「光酸化」の防止
    冷凍庫のドアを開けたときの外光や庫内灯による脂質の光劣化を防ぎます。
  3. 熱伝導率の高さによる急速冷却
    アルミはプラスチックよりも熱を素早く伝えるため、冷凍庫に入れた瞬間にパンの芯まで冷気が早く伝わり、氷の結晶が大きく成長するのを防ぎます。

「ラップで1枚ずつ包む手間が省ける」「何枚かまとめて放り込んでもパサつかず臭わない」という点において、忙しい家庭にとって非常に合理的なツールです。
そして、何より、冷凍臭も防いで、子どもに美味しい朝食を作ってあげられるので、我が家のように「週の後半になるとパンの味が落ちるのが気になる」「まとめ買いしたお気に入りのパンを2週間くらい美味しいままキープしたい」という場合には、ラップを何重にも巻く手間も省けて、とても理にかなった選択肢だと感じています。

5. 家庭でパンやお肉の美味しさを長持ちさせる科学的な冷凍アプローチ

家庭の冷凍庫で少しでも美味しさをキープするための鉄則は、「空気の隙間をゼロにする」「温度変化を与えない」の2点です。

方法手順と科学的アプローチおすすめのシーン
① アルミ多層袋を使う買ってきたパンをそのまま、または小分けして専用袋に入れてチャックを閉じる。
→ アルミ層で酸素・臭い・水蒸気の透過を完全遮断
毎日のパンを手軽に、確実に美味しく保ちたい時
② ピッチリ密着ラップ+密閉袋買ってきた袋やトレイから出し、表面に隙間が一切できないようラップで密着させてからジッパー袋へ。
→ 空隙をなくして昇華(霜)の逃げ場を奪う
専用袋がない時のパンやお肉の保存
③ 冷凍庫の「奥」に配置する開閉時の暖気の影響を一番受ける手前やドアポケットを避け、温度変化の少ない庫内奥へ置く。
→ 昇華の引き金となる温度のゆらぎを最小化
1週間以上ストックしておきたい食品全般

【おまけ】劇的に劣化を防ぐ。おすすめの冷凍便利グッズ

忙しい日々の中で「毎回丁寧にラップを隙間なく巻く時間すら惜しい!」という場合、科学的に理にかなった道具に(少々割高にはなりますが)頼るのが一番の近道です。

1. マーナ(marna)パン冷凍保存袋

アルミを挟んだ3層構造フィルムを採用した、パン専用の保存袋です。

  • メリット:ラップなしでそのまま食パンやロールパンを入れるだけで、霜つき・冷凍焼け・冷凍庫臭をしっかり防止してくれます。閉めやすいダブルチャック構造で、洗って繰り返し使えるため経済的です。

2. 急速冷凍用アルミプレート

熱伝導率が極めて高いアルミ製のプレートです。
(※急速冷凍機能がついた冷蔵庫を持っている場合は、同冷凍コーナーに収まらない量のパンを一度に買う場合のみメリットあり)

  • メリット:食品を乗せて冷凍庫に入れるだけで、熱を急速に奪って素早く凍らせてくれます。氷結晶が小さく抑えられるため、解凍した時のパンのパサつきや、お肉のドリップ流出を大幅に防いでくれます。

まとめ

  • 未開封の袋に霜がつくのは、開閉による温度変化でパンの中の水分が直接気体になって逃げ出す「昇華現象」が原因。
  • 冷凍庫臭の正体は、「パン自身の油が酸化した臭い」と「スポンジ状になったパンが庫内の臭いを吸着した現象」が合体したもの
  • 一般的なポリ袋やラップは気体を通してしまうため、長期間の防臭・防湿にはアルミ層を含む多層構造の保存袋が極めて効果的。

平日を乗り切るために「休日のまとめ買い&冷凍保存」は、どうしても必要になる家庭が多いかと思います。

ただ凍らせるだけでなく、ちょっとした「素材や空気の隙間」の理屈を知っておくだけで、週末に買ったお気に入りのパンが、平日朝でも焼きたてのような美味しさで楽しめます。
せっかくパンを作ったり買ったなら美味しく食べて欲しい、子どもに朝ごはんを食べて元気に学校・幼稚園に行ってほしい、という思いで、適切な期間・方法で冷凍保存しようと思います。

我が家は、親が高級食パン好きなので、家から遠い食パン屋さんに行った時はまとめ買いをしてしまいます…笑。
結局、冷凍臭がついてしまっては、美味しくないので、買いすぎないようにした上で、適切な保存包装も使っていこうと思います。

参考文献

  • 日本包装学会誌「食品包装用多層フィルムのガスバリア性評価」
  • 日本冷凍空調学会「冷凍食品Q&A:冷凍焼けおよび臭い移りのメカニズム」
  • 一般社団法人 日本冷凍食品協会「家庭での上手な冷凍保存方法」

等を基に作成