子どもたちが大好きなパン。
ただ市販品はマーガリンやショートニングが含まれており、多少食べても良いと思っていても、できれば、それら添加物を含まないパンを食べさせたい…。
朝ごはんやおやつに食べる機会が多いからこそ、「できるだけ体に優しくて無添加なものを」と思い、栄養豊富な全粒粉を使ってホームベーカリーで食パン作りに挑戦してみました。

ところが、焼き上がりのフタを開けてみてびっくり。

いつもの食パンのようにふっくら高く膨らむはずが、背丈はいつもの半分ほど。ずっしりと重く、目が詰まった硬いパンになってしまいました……。

子どもたちには栄養たっぷりの全粒粉パンを食べさせてあげたいけれど、なぜ全粒粉だと膨らまないのでしょうか?
そして、全粒粉をできるだけ多く使いつつ、子どもが美味しく食べられるふわふわ食パンを焼くにはどうすればいいのか、科学的な観点から調べてみました。

そもそも全粒粉パンが膨らまない3つの科学的理由

パンがふっくらと膨らむのは、小麦粉の中のタンパク質が水と混ざり合って網目状の「グルテン膜」を作り、イーストが発生させた炭酸ガスを風船のように内側に閉じ込めるからです。

しかし、全粒粉を使うとこの仕組みが根底から邪魔されてしまいます。

1. ふすま(外皮)がグルテンの膜をズタズタに切り裂く(物理的要因)

小麦の粒の表皮である「ふすま(小麦ブラン)」の主成分は、セルロースやリグニンといった非常に頑丈な不溶性食物繊維です。これは木材や竹と同じ仲間で、人間が噛んでも消化できないほど硬い組織です。
人が手でこねたり、ホームベーカリーの羽が回転したくらいでは、このふすまの繊維は壊れません。

製粉された全粒粉のふすま片は、ミクロの世界で見ると「角が尖ったガラスの破片」のような状態になっています。
生地の中でせっかく伸びようとしているしなやかなグルテンの膜を、この硬いふすまが内側から物理的にザクザクと切り裂いて穴を開けてしまいます。
その結果、ガスが外に漏れ出てしまい、上に膨らむことができなくなります。

2. ふすまの「吸水力」が高すぎて、グルテンが水不足になる

ふすまの不溶性食物繊維は、スポンジのように猛烈な勢いで水分を吸収します。

通常の強力粉と同じ配合で水を入れると、水分の多くをふすまに奪われてしまい、グルテンを作るためのタンパク質に十分な水が行き渡りません(水和不足)。生地全体の伸びが悪く固くなってしまうため、釜伸び(焼成時の膨らみ)が妨げられます。

3. 胚芽に含まれる成分がグルテン結合を壊す(化学的要因)

小麦の粒の根元にある「胚芽(はいが)」には、還元型グルタチオンという物質が含まれています。

このグルタチオンは、グルテン同士を強固に結びつけている「ジスルフィド結合(-S-S-結合)」を化学的に切断(還元)してしまう作用があります。ふすまによる物理的な攻撃に加え、化学的にもグルテンの骨組みが弱まってしまうのです。

「製パン向き」全粒粉は何が違う?失敗しない粉の選び方

市販の全粒粉には「お菓子用」「石臼挽き」「パン用」など様々な表記があります。ホームベーカリーで少しでもふっくら焼きたい場合、どんな全粒粉を選べばよいのでしょうか。

① 粒度:「微粉砕(微粒)」タイプを選ぶこと

一番のポイントは、ふすまの粒の大きさです。

一般的な全粒粉は粒が粗く、グルテンを切断する「ハサミ」が大きいため膨らみにくくなります。一方、特殊な製粉技術で粉砕された「微粉砕(微粒)」タイプの全粒粉は、ふすまの粒子が極限まで細かくなっています。
刃先が小さくなるためグルテン膜へのダメージを最小限に抑えられ、ザラつきのない口当たりの良いパンに仕上がります。

  • 代表例:富澤商店の「微粒全粒粉(全粒粉100%で焼けるパン用粉)」、cotta(コッタ)の「北海道産強力微粉砕全粒粉」など

② タンパク質含有量:13.0%以上の強力粉規格

もう一つのポイントは、たんぱく質量が13.0%〜13.5%以上あるものを選ぶこと。

ふすまによってグルテンの網目が傷つけられる分、もともとのタンパク質が豊富な「超強力小麦」や「北米産強力小麦」ベースの粉を選ぶことで、骨組みを強固に保ちやすくなります。

※「石臼挽き」と書かれた全粒粉は、風味が抜群で香ばしい反面、粒子が粗くグルテンが壊れやすいため、ホームベーカリーでふわふわ食パンを焼く用途には難易度が高くなります。

全粒粉は何%まで入れられる?子どもが喜ぶ黄金比率

「栄養のために全粒粉100%で焼きたい!」と思っていたのですが、ホームベーカリーの通常コースで100%全粒粉を使うと、微粒タイプを使っても「どっしり詰まった重いパン」になってしまうようです。
(大人は香ばしくて美味しく食べられても、子どもにとっては硬くてパサついて感じられ、嫌がってしまう原因になります)

子どもが「いつものパンと同じくらいふわふわで美味しい!」と喜んで食べてくれる配合の上限はどれくらいでしょうか?

おすすめの配合割合と仕上がりの違い

全粒粉の割合仕上がりの特徴子どもの食べやすさ
20%(粉250g中 50g)通常の食パンと変わらない高さとふんわり感。ほんのり香ばしい。◎ いつものパン感覚で完食
30%(粉250g中 75g)膨らみは保たれつつ、全粒粉特有のコクとプチプチ感(香ばしさ)がしっかり出る。○ 食べやすい
50%(粉250g中 125g)やや背丈が低くなり、もっちり・ずっしりした食感に。△ 好みが分かれる
100%(全粒粉のみ)膨らみは通常の半分〜6割程度。ドイツパンのように目が詰まった重いパンになる。× 子どもには硬く感じやすい

結論として、家庭でふわふわ食パンを焼くなら、まずは「強力粉80%:全粒粉20%」からスタートし、慣れてきたら「30%(上限として40%)」を目安にするのが、子ども向け、という点では良いのかもしれません。
我が家の場合は、50%くらいから、食べてはくれるものの、違うパンがいい~と言われてしまったので、やはり30%くらいがちょうど良いのかなと思っています。

全粒粉入り食パンをホームベーカリーでふんわり焼くコツ

上記で膨らまない理由で書いた通り、全粒粉を混ぜて焼くのであれば、通常の強力粉のみを使ったレシピから、少しアレンジする必要があります。
以下3点を微調整することで、膨らみがグッと良くなるはずです。

1. 水分量を少し増やす(小さじ1〜大さじ1程度)

前述の通り、全粒粉のふすまは水分をごっそり吸い取ります。

いつもの食パンレシピに対して、全粒粉を配合した分、水を5〜10g(小さじ1〜大さじ1弱)多めに入れると、生地が硬くならずグルテンがスムーズに形成されやすくなります。

2. 強力粉はタンパク質が高めのものと合わせる

ベースにする白い強力粉も、「カメリア」や「ゴールデンヨット」「春よ恋」など、タンパク質含有量が高く釜伸びの良い粉を組み合わせると、全粒粉の重さをしっかりと持ち上げてくれます。

3. バターや油脂をほんの少し増やす

ふすまのザラザラした食感を滑らかにし、グルテンの伸びを助けるために、バターなどの油脂をほんの少し多めにすると、翌日もしっとり柔らかな食感が持続します。

まとめ

ホームベーカリーで全粒粉パンが膨らまないのは、腕や機械のせいではなく、ふすまが高栄養価を持ちながらも、「膨らむ」と行程を邪魔してしまうから…。
全粒粉の粉の種類や比率、水分量を調整すれば、精製された小麦粉ではなく、全粒粉も含められるので、子どもたちが、美味しい!と言ってくれる成分と、トッピングを探していきたいと思います。

ただ、私自身は全粒粉のパンは、子どもが生まれてから積極的に食べるようになった人間なので、まずは美味しい全粒粉パンを知るためにも、ふるさと納税の枠が年末に残っていたら、美味しいと評判の全粒粉パンを取り寄せてみたいと思います。
(無添加のドイツパンであれば、成城石井等、高級スーパーで扱いがあるので買ってみたのですが、子どもたちは普通のパンが良かったようです…ふるさと納税の子どもが画像に乗っているような全粒粉パンであれば、美味しく食べられるのかな?という興味です笑)

参考文献

  • Panasonic ホームベーカリー 公式サイト
  • 木下製粉株式会社ホームページ
  • cotta column 全粒粉100% 基本の食パンレシピ

等を基に作成