子どもが食べやすい柔らかさのお肉にするには、肉の種類(鶏肉・豚肉・牛肉)や部位に応じて、どのような調理が必要なのか
我が家には2歳・4歳の子どもがいますが、固いお肉は好まず、柔らかくなっているお肉でないと食べてくれません。
中には小さい頃から、焼肉でお肉をがつがつ食べれるお子さんもいらっしゃるかとは思うのですが、幼稚園児くらいまでは、まだまだ柔らかいお肉を好む子も多いのではないでしょうか?
圧力鍋を使えば柔らかくはなるものの、圧力鍋は洗う部品が多かったりして、我が家ではリモートワークの合間だったり、子どもと家で遊んでいる間にコトコト煮物を作ることが多いです。
という中で、鶏肉は比較的すぐに柔らかくなるのに、豚肉や牛肉は1時間程度煮込んでも、まだ子どもが食べやすい柔らかさまで柔らかくなっていないことが多いように感じています。
この原因は何なのでしょうか? また、どうやったら柔らかく食べやすいお肉になるのでしょうか?
肉の種類(鶏肉・豚肉・牛肉)や部位(鶏肉であれば、胸肉とモモ肉等)ごとに、最適な調理時間等について調べてみました。
部位別の柔らかくする調理方法
鶏肉の場合、ささみや胸肉だと、長時間煮込んでも、ほろほろ崩れる感じはなく、かなり固くなってしまう一方で、もも肉だとほろほろ崩れる柔らかさまでもっていくことができます。
それら部位で何が違うかというと、煮込んで柔らかくなるコラーゲンといった成分が含まれるか、筋肉等の元となっている固い部位が多いのかで変わってくるということで、部位としては大きく2種類に分けて考えます。
- 加熱すればするほど柔らかくなる部位(煮込み向き)
「コラーゲン(結合組織)」が多い部位は、長時間加熱することでコラーゲンがゼラチンに変わり、とろけるような食感になります。
例)豚バラ肉(角煮に使われる部位)、鶏もも肉等 - 加熱しすぎると硬くなる部位
「筋肉の繊維」がメインの部位で、加熱しすぎると水分が抜けきってしまい、繊維が固く締まっていく
例)豚ヒレ肉、鶏もも肉、ささみ等
肉の種類(鶏肉・豚肉・牛肉)による違い
「筋肉の繊維」がメインの部位については、加熱しすぎると固くなるということで、どの肉の種類でも共通して、最適な加熱時間にすることが重要なのですが、コラーゲン(結合組織)や脂肪分が多い部位では、鶏肉・豚肉・牛肉で少々性質が違う部分があるということなので、後者を前提に違いを調べてみました
- 鶏肉(もも肉等) - ポイント:ゼラチンの「再吸収」
鶏肉は他の肉に比べて、筋肉を束ねるコラーゲンが細く、分解されやすいのが特徴。加熱で溶け出したコラーゲン(ゼラチン)を、いかに肉の中に戻すかが重要。
※煮込みすぎると水分が抜けてパサつくため、火を止めてから、煮汁の中でゆっくり冷ます - 豚肉(バラ・肩ロース等) - ポイント:脂の「潤滑」と「分解」
豚肉は適度な脂身と、しっかりした筋肉の繊維を持っているため、脂身を熱で溶かして「潤滑油」にしつつ、酸や糖の力で繊維の結合を緩める。(具体的には、砂糖はタンパク質が固まるのを防ぐ「保水剤」の役割を果たし、お酢やコーラなどの「酸」を使って繊維を化学的にほぐす効果があります。※詳細は後述) - 牛肉(スネ・すじ等) - ポイント:巨大な「結晶」の破壊
牛肉は大きな体を支えるため、コラーゲンの束が太く、まるで「巨大な結晶」のように強固に結びついており、この巨大なコラーゲン結晶を破壊するには、鶏や豚よりも「高い温度」か「長い時間」が必要。
※結晶化は、化学的には「架橋(かきょう):クロスリンク」と呼ばれ、結びつきが強固で巨大な構造になっているため、熱が中心部まで届いて分解するのに時間がかかるという状態
牛肉は1時間程度の煮込みだと、タンパク質はガチガチに固まっているのに、コラーゲンはまだ溶けていない「一番硬い状態」になります。(牛すじ肉煮込みを作るときに、臭みを取るために、数回下茹でをしたりすると思うのですが、一回下茹でだけしただけの、固く弾力がある状況ですね)
牛肉においては、和牛は霜降りと言われて脂肪分が多い部位もありますが、牛バラと言われる部位でも、豚バラほど脂肪分が多くない肉がほとんどです。脂肪分以外のメインはタンパク質で、タンパク質は以下のように温度が高くなると、ぐっと固くなるので、それを強く感じやすくなります。
(もちろん、牛肉以外の肉でも同様な反応は生じているのですが、単位量あたりのたんぱく質量が多い傾向にある牛肉で顕著に出やすいということになります。)
50℃〜: お肉の水分を抱え込んでいるタンパク質が縮み始め、水分(肉汁)を外に押し出し始める
65℃〜: 「エラスチン」などの硬い結合組織がさらにギュッと縮まり、一気に歯ごたえが増す
80℃以上: 完全に水分が抜け、繊維がガチガチに固まった「ウェルダン」の状態になる
※エラスチンとは、加熱してもゼラチン化しない非常に頑丈なタンパク質で、煮込んでも柔らかくならないので、包丁で細かく叩くなどの物理的な処理が必要
筋肉繊維が多い部位(鶏むね等)を柔らかくするためには
上記で記載の通り、筋肉繊維が多いパサつきやすい部位と、長く煮込んで柔らかくなるような部位では、柔らかくするためのポイントが大きくことなるので、まずは鶏むね肉等のパサつきやすい筋肉繊維メインの部位を柔らかくする方法ですが…
- 1. 鶏肉:しっとり仕上げる「保水」がカギ
コラーゲンがゼラチン化して繊維がバラバラになっても、加熱を続けると肉自体の水分と脂がすべてスープに逃げてしまいます。鶏肉(特にムネ肉やササミ)は水分が抜けやすく、加熱しすぎるとパサパサになりがち…。
コラーゲンがそもそも少ない部位なので、水分をいかに残すかが柔らかさの鍵となります。- ブライン液に浸ける: 水100mlに対し、塩5g・砂糖5gを溶かした液に30分〜1晩浸けます。これだけで驚くほどジューシーになります。
- フォークで穴を開ける: 繊維を断ち切り、味が染み込みやすくします。
- 片栗粉でコーティング: 焼く直前に片栗粉や小麦粉をまぶすと、肉の水分が逃げ出しにくくなります。
- 余熱調理: 沸騰したお湯に火を止めてから入れ、蓋をして放置する(サラダチキン方式)のが最も柔らかくなります。
- 2. 豚肉:繊維を「断つ」と「分解」
豚肉は、鶏肉に比べると筋肉の繊維がしっかりしているため、保水だけではなく、物理的にほぐすか酵素の力を活用することgア重要。- 筋切りをする: 赤身と脂身の間にある「筋」を包丁の先で切ります。焼いた時の縮みも防げます。
- 叩く: 肉叩きや瓶の底で叩いて薄く伸ばすと、繊維が壊れて柔らかい食感になります。
- 酸や酵素に漬ける: 玉ねぎのすりおろし、パイナップル、キウイ、またはヨーグルトに30分ほど漬け込むと、タンパク質が分解されて柔らかくなります。
- 低温から加熱: 冷たいフライパンにお肉を並べてから火をつける「コールドスタート」だと、タンパク質が急激に固まりません。
- 3. 牛肉:温度管理と「酸」の活用
牛肉は加熱しすぎるとタンパク質が強く結合してゴムのような食感になってしまいます。- 常温に戻す: 焼く30分前に冷蔵庫から出し、内部温度を上げておきます。冷たいままだと表面だけ焼きすぎて硬くなります。
- 舞茸と一緒に置く: 舞茸に含まれる酵素「プロテアーゼ」は牛肉のタンパク質を強力に分解します。刻んだ舞茸をまぶして1時間ほど置くと劇的に変わります。
- 重曹を使う: ごく少量の重曹を水に溶かして揉み込むと、pH値が変わり保水力がアップします(中華料理で使われる手法)。
- 休ませる: 焼いた後、アルミホイルに包んで肉の重さと同じくらいの時間休ませます。肉汁が安定し、全体が柔らかく感じられます。
煮込み料理でほろほろの柔らかい肉質にするには
基本的には、長く加熱して、コラーゲンをゼラチン化することが重要です(あまりにも極端に長く煮込みすぎるとパサつきが目立ってくる可能性もありますが)。また、保水を図ることでさらに柔らかな触感を維持することが可能です。
① 「砂糖」を先に入れる
味付けをする際、**醤油より先に「砂糖」**を入れてください。砂糖にはお肉のタンパク質が固まるのを防ぎ、水分を保持する(保水性)強力な力があります。醤油(塩分)を先に入れるとお肉が引き締まって硬くなってしまいます。
② 下ゆでを行う
いきなり味付けして煮るのではなく、水(またはお米の研ぎ汁)だけで1時間ほど下ゆでします。これによって余計な脂が抜け、コラーゲンがゼラチン化しやすくなります。
(参考:早く柔らかくするための方法) ③ 酸や炭酸を活用する
コーラ煮やビール煮、お酢を入れた煮込みが有名なのは、酸や炭酸がお肉の繊維を分解してくれるからです。これらを使うと、通常の半分程度の時間でホロホロになります。
(参考:早く柔らかくするための方法)④ 「酵素」の力を借りる
焼く前にキウイ、梨、玉ねぎ、舞茸などに漬け込むと、強力な酵素がタンパク質をあらかじめ分解してくれるので、加熱しても硬くなりにくくなります。
(参考:牛肉等のエラスチンが多い部位を柔らかくする方法) ⑤ 物理的に繊維を断つ
エラスチンは、加熱することで柔らかくなる繊維ではないので、エラスチンが多く含まれる部位については、筋切り用の道具を使ったり、肉をたたいたりして、物理的に繊維を断ってしまうことで確実に柔らかくできます。
牛すじのように、固い部位を柔らかい部位が一緒に入って美味しい場合もあるので、好みによるかと思いますが…
といった工夫をしつつ、それぞれの肉に対して、適切な加熱時間で加熱すれば柔らかく、子どもでも食べやすいお肉が作れるかと思います。
【目安の加熱時間】(煮込み料理を想定、サイズや火力によって変わる可能性もあるので要調整)
鶏肉(もも肉想定):40分~1.5時間
豚肉(豚バラ想定):1.5~2.5時間
牛肉(牛すじ想定):3時間以上
時短に柔らかいお肉料理を日々出すための我が家のパターン
我が家は共働きなので、長時間キッチンに立っていることはできないので、基本的には
・土日に鶏肉(コラーゲンが多い部位)を事前にりんご・酢・砂糖等の調味料に漬けておく(場合によっては漬け込んだ肉を冷凍しておく)→休日に鍋でコトコト煮込む
・豚バラ等のコラーゲンが多い部位の薄切りを、30分以下で煮込む(豚汁とった肉を入れたスープ等、結構ほろほろに近くなるまで煮込みます)
とすることが多いです。
圧力鍋だと、どうしても鍋の部品数が多くなってしまい、かつ食洗器も使えないケースがほとんどで面倒…ということで圧力調理はほとんどしません。
ヘルシオホットクックは、食洗器対応の部品が多いので、牛すじ等、煮込みに時間がかかる料理については、ほっとクックにお任せすることもありますが、子どもと味見しながら、ぐつぐつ煮込まれる様子を見るのも食育に良いかなと、鍋で子どもと調理したり、調理の過程を一緒に見たりすることが多いです。
正直肉を柔らかくまで煮込もうとすると、時間がかかるので面倒な時もありますが、子どもが一生懸命色々なものを食べられるようになろうとしているところなので、それぞれの肉ごとに適切な加熱方法・時間を見つけ、子どもでの食べやすい料理を探索していきたいと思います。
参考文献
・『新版 調理科学読本』(日本調理科学会)
・『「こつ」の科学』(佐藤秀美 著)
・『食肉の科学』(伊藤・高坂 共編 / 朝倉書店)
・日本調理科学会の論文
※化学・物理領域の各種法則等も考慮